21世紀は 工芸おもしろい

A5判、全328頁、定価 本体2300円(税別)。2003年10月22日 M求龍堂より刊行、学校法人塚本学院(大阪芸術大学)出版助成第34号
著者:柳原睦夫(陶芸・大阪芸術大学)/中村錦平(陶芸・多摩美術大学)/宮島久雄(近代デザイン史・国立国際美術館)/鶴岡真弓(西洋美術史・立命館大学)/藪 亨(近代デザイン史・大阪芸術大学)/山口道夫(デザイン・大阪芸術大学)/田嶋悦子(陶芸・大阪芸術大学)/熊井恭子(ファイバーワーク・長岡造形大学)/橋本真之(金工)/佐藤道信(日本美術史・東京芸術大学)/建畠 晢(芸術批評・多摩美術大学)/小山修三(民族学・考古学・国立民族学博物館)/藤森照信(建築史・東京大学)/ 北澤憲昭(美術評論・跡見学園女子大学)/佐野敬彦(環境デザイン論・大阪芸術大学)/與那嶺一子(沖縄工芸・沖縄県立博物館)/小林純子(日本美術史・沖縄県立芸術大学)/松原龍一(工芸史・京都国立近代美術館)/今井陽子(美術史・東京国立近代美術館)/三浦景生(染色)/深見陶治(陶芸)/小野山和代(染織・大阪芸術大学)/東野眞紀(陶芸史・大阪芸術大学)/館美奈子(工芸史・大阪美術専門学校)/ 編著: 福本繁樹(染色・大阪芸術大学)/ブックでザイン: 中谷匡児


21世紀工芸の担い手 必読! 陶芸、染織、金工、デザイン、建築、美術史、デザイン史、考古学、民族学、芸術評論、環境デザイン論などの現場から22名のパネリストが解き明かす工芸の本質と可能性。巻末にすぐに役立つ用語解説  出版社より発売中



書評 BOOK REVIEW

20世紀は、生活用品が産業製品となり便利になったが、千年後に、どんな物を使っていた時代かと問われた時に誇れるものが残るだろうか。工芸に関わる人々が、その危機感と同時に、今見直されている身体感覚を呼び戻すとすれば工芸ではないかという意識を語り合った座談集。織物・陶磁器・染色・金工などさまざまな分野、東京・京都・大阪・沖縄とさまざまな土地で制作をする現場の話が面白い。たとえば、沖縄の陶器は媚びがなくすばらしいという外からの評と、素朴と稚拙を混同されているようで気になるという土地の人の疑問のぶつかり合いなどだ。芸術大学で工芸を学ぶ時代の中で、一子相伝から抜け出した、しかし質の高い工芸を産み出そうと決意した21世紀が楽しみだ。
中村桂子(生命誌館館長) 毎日新聞 本と出会うー批評と紹介 2003年11月16日 

ちょうど、東京芸大美術館で「工芸の世紀」展を見て、明治から現代に至る"工芸"が近代化の波を受け、大学という制度に組み入れられていく過程を垣間見た思いがしていたところだったから、興味深く読めた。本書名の「おもしろい」の裏には、そうした近代化、機械化、また制度化によって、手を介した"ものづくり"が危機にさらされていることがあるようだ。編著者はそのひとつとして「一貫制作によって技術力の向上が危うくなった。芸術のためには、技術よりも発想やコンセプトがたいせつだと、技術が軽視されてきた」ことを挙げる。工芸の未来に対する危機感と希望は各論者に共通するところだが、その各論は多様に異なっている。制度のなかで、その多様性をいかに遍在させていくかも課題のひとつだろう。
「月刊美術」12月号 ART BOOKS 気になる本 美術書[短評] 今月の"イチ推し"本 2003年12月20日 (抜粋)

工芸とは何か。例えば鍛金という分野がある。金属板をたたくと延びていく。それは素材の性質でもあり、たたく者の意志でもある。その両者が様々なレベルで融合して一つの形に結実する。それが工芸である。ただしそのレベルのあり方によって@職人、A産業デザイナー、B個人作家(工芸家)の別が生じ、どれを「工芸」として認識しているかによってさまざまな捉(とら)え方が生じる。本書はこうした錯綜(さくそう)する現代工芸の実相を捉え、未来への展望を見出そうとして行われた平成9〜14年度の大阪芸術大学藝術研究所研究計画活動の中の、八つのシンポジウム・対談の記録である。工芸家、美術史家などが登場し、主要作品の図版もある。また巻末の用語集はどこにも出ていない最先端のものも収録されており、主催者、編集者の見識の高さをうかがわせる。
それにしても多様な捉え方があるものだ。美術家が「工芸的」という評語を忌み嫌うのはもともと工芸から美術が分離してくるので、その出自を無意識に隠蔽(いんぺい)しようとするからだという人。工芸は西洋的な「視覚の美」ではなく、触ってもいいし、頭にきたら、夫婦げんかなどで壊してもいい「全感覚の美」であるという人。工芸は感性と技術とがせめぎ合って表された形という人もいる。
とくにBに関して機能や生活を持ち出して美術と異なる評価基準を設けようとすること。それが宋の青磁や桃山の茶陶などという内外の古典の「写し」を基準にする工芸観と相互に補完し合い、極端な場合、宋の青磁の模作を現代陶芸の名品として絶賛するというような芸術論の倒錯をきたす。これが現代である。それに比べると本書の議論は随分と進化したものである。
しかし問題も大きい。@、A、Bの区別がついていなかったり混同されたりしているからである。パネラーのさまざまな工芸観が現代工芸研究の水準に照らしてどの位置にあるのか、その俯瞰(ふかん)図を作り出すこと。そうしてこそ編集者の言う未来への展望が開かれていく。
金子賢治(東京国立近代美術館工芸課長)「多様な捉え方が展望を開く」 京都新聞 読書 2003年12月7日

大阪芸術大学藝術研究所研究計画(平成9〜14年度)の取り組みの成果をまとめた『21世紀は工芸がおもしろい』はなかなか読み応えのある一冊だ。この研究計画は21世紀における「工芸」と「工芸教育」の実態についての調査研究とともに、21世紀の工芸理念の研究をすすめようとする活動の一環で、大きな特長はセッションのパネリストをいろいろな分野から複数設定して、それぞれの意見を自由に述べてもらっているところにある。その結果、ある程度の共通認識を得られたセッションもあれば、そうでないものもあり、臨場感に満ちた内容となっている。工芸が問題とされるのは、ヨーロッパの近代に確立された純粋芸術と応用芸術という概念を、日本では明治以降そのまま受容してしまったことに起因しているのだが、もっと問題なのは、明治以前のわが国の美のあり方が議論されずに話が進んでいくことだろう。その点、本書では《「装飾」をめぐって》《縄文と工芸》《モダニズムと工芸》などの章でこうした点にも触れていて興味深いものがある。
MINIきもの通信 TENTACLE Vol.36 FROMf六pyぢsk 2003年12月11日 (抜粋)
 
21世紀は工芸がいっそう見直されるべきだ。しかし、その工芸が今、危機的な状況にある。工芸作家や美術評論家、建築家ら21人がパネリストとして集まり、21世紀の工芸について意見を交わした、大阪芸術大学藝術研究所の取組みが一冊の本にまとまった。「工芸のほうから芸術を変えていく」「『沖縄病』という病気がある」「なぜ美術が上で、工芸が下になったのか」これからの工芸の担い手たちに向けて、刺激的な討論が続く。
季刊「銀花」第136号 冬の号 書物雑記 2003年12月30日 

近代化による変容を経て工芸にどのような可能性があるのか。若い世代に伝えるべきことは何か。大阪芸術大学を中心に、制作・教育の現場で活躍する論者25人が様々な視点から工芸をめぐる議論を繰り広げる。陶芸界からは、中村錦平、柳原睦夫、田嶋悦子、深見陶治がそれぞれの工芸論を展開する。工芸界の現代の動向を生きた言葉で概観できる本書は、将来の工芸を見据えるためにぜひ一読したい。
「炎芸術」77 やきもの/ガラス/工芸 新刊書籍案内 2004年2月1日 

本来、こんな短いところで紹介する本ではない。それほどに、工芸=やきものについて本質的なことが語られている。たとえば、工芸とは人間の誕生と葬礼に関わり、「全感覚の美」というべき全体的な概念であることや、日本において工芸と美術の分離は、近代に入ってからであることなど、工芸の始源に戻って議論がされている。柳原睦夫、福本繁樹などの進行によって、工芸=やきものの表現というものが、現在、どこにあるのかが、問われている。
季刊「陶磁郎」37 やきものBOOKガイド 2004年2月16日 



内容:

口絵 カラー16頁 10作家の作品とコメント

●いまぼくが工芸がおかれている状況をおもしろいと見ているのは、なんといっても近代主義が行き詰まってしまったことに、どう応えられるかですよね。(中村:陶芸
●現代のファッションを身につけるように現代芸術、あるいは現代工芸を身につけてゆくやり方にたいへん疑問を感じています。(柳原
:陶芸
●他人にはできない微調整が、作者本人にだけ可能なのが、ハンディクラフトの世界における一つの大きな特徴であると私は思います。(山口
:デザイン
●陶器の断面から世界を見つめなおし、自分なりの陶芸観ができるのではないかと、いま陶芸を続けています。(田嶋
:陶芸
●ただ布を膨らませてみたかった、風を孕む布をつくってみたかったという、それだけの理由でステンレス・スチールの細い線を使うようになったんです。(熊井
:ファイバーワーク
●金槌の当たり具合で、瞬間的に形態が顕れ、消え、方向が動きますので、瞬間の判断力が必要な方向です。(橋本
:金工
●自然の素材は、自然のまま使うとだいたい不均質で、一個一個違うんですよね。そういう自然の素材がもっている不均質なばらつきを、むしろ積極的に活かしたい。(藤森
:建築
●遊びとかよろこびですね、そういう要素がいつもほしいのです。仕事に遊びの要素がないと続かないですわな。作品を見るひともしんどいでっしゃろ。(三浦
:染色
●ぼくがあるとき壁に向かって描いた弧で、「ここまで行きたい」と思ったのが三メートルだった。(深見
:陶芸
●模様染め文化や、それに関する感性は、ヨーロッパ文化には欠落しているものだから、ぼくの場合は、「文化の翻訳」とか国際理解の壁がつねについてまわる。(福本
:染色

 

著者25名による提言「21世紀は工芸がおもしろい」

第1章 大学と工芸
長いスパンでものを見まして、現在の学校教育、いわゆる公教育というのは、はっきり言って失敗じゃなかったかと私自身思うんですね(宮島久雄:近代デザイン史・国立国際美術館)/私が密かに誇りにしているのは、陶芸コースが以前から「教えすぎない」という教育方針を明確にして、それを大学や工芸学科の案内書のなかに文章で明記してきたことです(柳原睦夫)/生々しく競争させる、自分の創造力を引っぱりだす、創造力を他の人と比較させることを二〇歳代のときに経験してもらうことは、ぼくは授業料に見合ったことだと思うんです(中村錦平:陶芸・多摩美術大学)

第2章 「装飾」をめぐって
クラフトの問題が置き去りにされているということへの反省が、まずイギリスでアーツ・アンド・クラフツ運動というようなかたちで提起されてくるわけです(藪 亨:デザイン史・大阪芸術大学)/日本では第二次世界大戦後にファッションの分野から「デザイン」という言葉が急激に普遍化し、「デザインとはなんぞや」と十分に考える暇もなく日本語化されました(山口道夫:デザイン・大阪芸術大学)/純粋芸術の絵画・彫刻は「視覚の美」、工芸・建築は「全感覚の美」である(鶴岡真弓:西洋美術史・立命館大学)/装飾が主役で、装飾こそが実態を認識する役割をもっているのではないか(柳原睦夫:陶芸・大阪芸術大学)

第3章 創作の現場における「発見」
立体として成立させるためには、まわりの空気、空間をいかに作品といっしょに組み込ませるかが重要なポイントであると思いました(田嶋悦子:陶芸・大阪芸術大学)/材料を触っていると「こんなこともできる!」なんて発見があるんですね。私たちが生きていて、いちばんうれしい瞬間は、なにかを「発見」した時じゃないかと思うんだけど(熊井恭子:ファイバーワーク・長岡造形大学)/1985年でしたが、野外空間で作品を展示するということを要請され、はじめは自分の作品を単純に持ち出せばよいと考えていて、それではすまないということに気づかされました(橋本真之:金工)

第4章 縄文と工芸
土器は主として渦巻文だとか波状文だとか、デザインによって地域性がみられる、これは一種のファッションです。それによって一定の地域性が把握できるという事実はちょっと不思議だと思いませんか(小山修三:民族学・考古学・国立民族学博物館)/「縄文人のこころをつかむ」ためには、土器の技術や機能性よりも、むしろ、土器が単なる器物以上の役割をする部分に注目すべきではないかと思われます(福本繁樹:染色・民族藝術学・大阪芸術大学)/30数年、私の焼物造形の原点は縄文なんです(柳原睦夫)/じつは私たちは、その概念が機構化された枠に従って学んで、それを今度は過去に投影して歴史として見ている。いわば近現代の色づけのサングラスで見ているわけですね(佐藤道信:日本美術史・東京芸術大学)/たしかにアンソロポモーフィズム、神人同形説的な考え方が、絵画・彫刻の上位概念という幻想を生み出すのに、なんか働いたかなぁという気がしますね(建畠 晢:芸術批評・多摩美術大学)

第5章 モダニズムと工芸
とくに20世紀の建築というのは、1920年以降に成立したんですが、基本的には、自然の素材ということをあまり考えてこなかったのですね(藤森照信:建築史・東京大学)/なぜ絵画中心になったのか、なぜ美術史というものがこのようなかたちで展開してきたのかということを考えていくときに、工芸というジャンルの成立過程が、ひじょうに重要な意味を帯びて見えてくるわけです(北澤憲昭:美術評論・跡見学園女子大学)/アール・デコというのも私のひとつのテーマなんですが、これはデザインと、工芸と建築とも関わり、また、室内に掛けるという意味では絵画とも関わったりという、そういう複合したところですね。そこに私は興味があるということです(佐野敬彦:環境デザイン論・大阪芸術大学)/金工や陶芸や染織など、全部ひっくるめてやるコースがあってもおもしろいんではないかというような提案は、示唆するものがあると思います(山口道夫)

第6章 グローバリズムと土着性
沖縄の工芸をわかりやすく言うとき、「いろいろなところが見えるもの」と、よく説明しています(與那嶺一子:沖縄工芸・沖縄県立博物館)/そういう沖縄病に代表されるような人たちが外からの目で考える沖縄像を修正してゆくのが一つの仕事だと思います(小林純子:日本美術史・沖縄県立芸術大学)/その土地でしか生まれてこないもの、そういうものが必然的に生まれてくる土壌といったものが大事なのではないかということです(松原龍一:近代工芸・京都国立近代美術館)/それぞれの地域、風土によって現われてくる形、あるいは必要性というのも伴って、工芸のひとつの特性が出てくると思うのですが、現地では、地域性の違いをこえたところでのインパクトを受けたようでした(今井陽子:美術史・東京国立近代美術館)/自然と人間と、その人間の手によってすべてが営まれるという工芸の原型がそこにあると思いました(柳原睦夫)

第7章 現代の模様をつくる 
私は「現代の模様」がないような気がしますのでね。自然とのつながりのなかで、現代に生きた模様ができたらなと思っています(三浦景生:染色)/京都というところは根の深い文化の蓄積した街で、私は京都に育てられたという感がつよいです(三浦景生)/「パターン」とは「原型、型」の意味合いが強くデジタル的なものですが、「もやう」とは、「かたち」「ありさま」「様子」でアナログ的なものだととらえています(福本繁樹)

第8章 想いのカタチを青白磁に託して
焼きものも染めものも、とくにこの日本が高度なレベルを誇る芸術ジャンルです。でもなぜこの二つが日本で特異的に発達したのか、興味深い理由があるはずです(福本繁樹)/焼きものの伝統、歴史のなかで、磁土と青白磁とで、陶芸の世界に針先ほどでもいいから、ぼくなりの風穴を一つあけて、向こうへ行けたらうれしいなと(深見陶治:陶芸)/焼きものの技術・技法というのは、いわゆる現代美術とか、ほかの美術にはない、すごみと奥行きをもっていると、ぼくは強く信じている。だから、他のジャンルとはちがうよと(深見陶治)

巻末付録「語句注解/用語解説/索引」 221の語句、専門用語、人名をわかりやすく解説



著書 目次

口絵 (著者10名の作品とコメント)

3

21世紀は工芸がおもしろい

16


第1章

大学と工芸 

25

  中村錦平/宮島久雄/柳原睦夫 

第2章

「装飾」をめぐって

57

 鶴岡 真弓/藪 亨/山口道夫/柳原睦夫 

第3章

創作の現場における「発見」

93

 田嶋悦子/熊井恭子/橋本真之/柳原睦夫

第4章

縄文と工芸

123

縄文時代と工芸  小山修三

ニューギニアの土器の例から  福本繁樹

セッション:縄文遺跡にて「大学と工芸」を考える

 佐藤道信/建畠 晢/小山修三/柳原睦夫

第5章

モダニズムと工芸

163

  藤森照信/北澤憲昭/佐野敬彦/山口道夫

第6章

グローバリズムと土着性 

193

  與那嶺一子/小林純子/今井陽子/松原龍一/柳原睦夫

第7章

現代の模様をつくる

223

 三浦景生/福本繁樹

第8章

想いのカタチを青白磁に託して

249

 深見陶治・福本繁樹


著者略歴

284

大阪芸術大学藝術研究所研究計画活動概要

288

後記にかえて 福本繁樹

290

語句注解/用語辞典/索引 小野山和代/東野眞紀/館美奈子/福本繁樹

326

 


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