大型のB4判、総104頁。カラー図版275点のほか、モノクロ図版、エッセイ、作品解説、現代染織造形用語解説など掲載。一部英訳文掲載。当刊では創作の現場における「発見」をテーマに、学生の主体的なプレゼンテーションをできるだけ大画面に展開できるよう配慮。巻末には工芸教育研究会主催のセッション「縄文と工芸」の記録が掲載されている。2002年
3月22日、大阪芸術大学工芸学科染織研究室内・高等教育研究改革推進「芸術の発表・表現とその社会的実践」担当部局発行。編集委員:
福本繁樹、小野山和代、加賀城健、山本将史、高橋亜希ほか、翻訳:
Meredith
McKinney、アートディレクション:石浜寿根 表紙掲載作品 表1 左:門田綾音 KADOTA
Ayane「氷点」(部分) 表4 左:酒井稚恵 SAKAI
Chie「parallelogram」(部分)

表1

表4
右:村井映与 MURAI
Mitsuyo「沈澱」(部分)
中:姫野実咲 HIMENO Misaki「my fiction
queen」(部分)
右:巽美由紀 TATSUMI
Miyuki「目覚め」(部分)
目次 学生一覧/索引 3 創作の現場における「発見」 4 ESSAY 6 PRESENTATION 9 染 Pattern Dyeing 56 織 Pattern Weaving 68 CONSTRUCTED TEXTILES 76 小枝プロジェクト 82 FELT BAG(私のフェルト・バッグ) 84 PERSONA(私の仮面) 86 特集・公開講座「縄文と工芸」記録 89 基調講演:縄文時代と工芸 小山修三 研究発表:ニューギニアの土器の例から 福本繁樹 セッション:縄文遺跡にて「大学と工芸」を考える パネリスト 佐藤道信、建畠 晢 新明解現代染織造形用語解説 100 New glossary of contemporary weaving, dyeing and modeling
terms 102 編集後記 Editorial afterword 104
コメンテーター 小山修三
進行 柳原睦夫
作品を創っていく中で声を上げて歓喜したのは久しぶりだった。(3 平野真記子)
It's been a long time since I cried aloud for joy as I was creating a
piece. (3 HIRANO Makiko)
照明、キャスト、観客との総合的な雰囲気のなかで、布のさまざまな表情がみられた。(4 山崎香織)
I discovered the multitude of expressions that cloth reveals when
it's bathed in the total atmosphere created by lighting, cast and
audience. (4 YAMAZAKI Kaori)
半防染で、こんなことができるんだ!と興味をもって、この技法をとりいれるようになりました。(7 奥村美樹)
I've adopted this half resist dye method, because it fascinated me to
discover what could be done with it. (7 OKUMURA Miki)
ステッチ技法でひたすら線を縫うことで、ますます近づく自分が、ちょっぴりこわい。(9 位 良子)
It was actually a bit scary to feel I was getting closer and closer
to my real self as I busily stitched. (9 KURAI Ryoko)
このことが、染色という体力勝負の作業で知った貴重な財産だ。(11 黒崎裕子)
This is a precious gift I've gained by learning through the contest
of physical strength that's involved in the dyeing process.
(11 KUROSAKI Yuko)
ヒトと植物の境界線は、こんなにも曖昧なものだっただろうか。今日の月はオレンジ色だ。(12 篠原佐也加)
I'm amazed to discover how subtle the line is between the two realms
of human and plant. The moon is orange tonight. (12 SHINOHARA
Sayaka)
この時、私がさがしていた芸術にめぐり会えたことを、頭ではなく心で感じとったのだろう。(15 巽美由紀)
I feel as if I've now experienced the encounter with art I was
searching for, and not with my head but with my heart. (15 TATSUMI
Miyuki)
人生で一番大切な発見を、大学生活のなかでしたのだから。(22 俵谷善人)
Yes the most important discoveries of my life have been made in my
university days. (22 HYOTANI Yoshihito)
作品に自然に表れたことに、自分の「好き」がもりだくさんなんだと気づきました。(26 柳 有紀)
I realized that there are just so many things I 'love' that come
through naturally in a piece. (26 YANAGI Yuki)
それは根気と体力を要するたいへんな仕事だった。(29 吉村亞希子)
It was tough work, and needed perseverance and physical strength.
(29 YOSHIMURA Akiko)
この糸たちは何度私の手のなかをすり抜けてゆくだろう。(30 渡邉泰江)
How many times will these little threads go slipping through my
hands? (30 WATANABE Hiroe)
結局、最終的に使ったのは自分の手だった。(36 清水 環)
In the end, it comes down to the fact that it was my own hands I
used. (36 SHIMIZU Tamaki)
仕上がってみると、こんなにも変わって見えるものなんだと驚いた。(38 竹内順子)
When I finished making it, I was amazed at how different it looked.
(38 TAKEUCHI Junko)
裏側の効果はさらに予想外だった。(41 富田良子)
It was the reverse side that was really unexpected for me.
(41 TOMITA Ryoko)
絡んだり、切れたりするする糸が、焦る私を笑っているようで悲しくなる。(45 平野久美子)
It made me sad to feel that the thread that kept tangling and
breaking was laughing at me and my frantic efforts. (45 HIRANO
Kumiko)
確実な仕事で同じものがいくつもできるという利点がなんだかおもしろくないように感じてきた。(48 松本有加)
I came to feel somehow bored with the supposed advantage, that
careful work can produce any number of pieces all the same.
(48 MATSUMOTO Yuka)
模様の線がちぢれる様子は、実際に作業を経験しないと理解しにくいと思います。(52 安江紀美)
I think you can't understand the way a line in the pattern bends
unless you've actually experienced the work of doing it. (52 YASUE
Kimi)
編集後記 (P.104
掲載)
4年計画で始まった出版計画も、今年度で最終となる。その間、各年度ごとに趣向をこらした成果と今日的な問題提起を、実作の現場から生の声で発信するよう心掛けた。初年の平成9年度は、染織と金工コースの発表と、大学院芸術制作研究科はじめての卒業生の成果を、3分冊にまとめることができた。平成10年度は「染織」と「テキスタイル」の違いから、文化と造形思考の基層的な違いを探った。平成11年度は「触覚:テクスチュア・風合い」の特集号によって「工芸は全感覚の美」を主張した。最終年度の今回は「創作の現場における『発見』」をテーマに、各制作者のこだわりを掘り起こそうとした。4年にわたる企画はそれぞれ、名乗りをあげ、違いを指摘し、重要ポイントを示し、創作の原点を探ろうとした、「起・承・転・結」の足跡となった。それは、なぜ染織なのか、なぜ日本の工芸なのかを、自らも問い、世界へも発信しようとする試みだった。その試みは今後も別の形で続けたいが、まずは4年間の成果を一括してご批判いただきたい。
この出版とともに「高等教育研究改革推進」の原動力となってご協力・ご参加いただいた教員や学生の諸氏に深謝いたします。また関係各位のご理解とご支援に心よりお礼申し上げます。主役はいつも著者の学生諸氏でした。出版を終えた編集子は、『采/綴』に綴じられた仕事が、今後社会に飛翔して、采采たる成果をあげることを祈念します。(福本繁樹)
私は編集業務のなかでも「CONSTRUCTED
TEXTILES」の企画に力をいれた。「CONSTRUCTED
TEXTILES」は、テキスタイル造形の基本的な手法で、ファイバーワークなど、現代染織造形の国際的な高まりとともに、改めて脚光をあびるようになった分野でありながら、わが国では系統的な研究や教育がほとんどみられず、その用語さえ知られていないのが現状である。日本で「CONSTRUCTED
TEXTILES」の語を用いた授業に取り組んでいるのは、わが染織コースだけではないだろうか。今回は学外の関島先生と連携したプロジェクトの成果を掲載することもできた。うれしかったのは、本場イギリスの大学教授らに1回生の掲載作品を評価いただいたことだ。このことは、現代テキスタイルアートの動向を探りながら授業に取り組んでいる私自身の励みともなった。
編集に取り組んだ4年間は、ミレニアムと世紀の推移、通信教育部開設、校舎改装移転など、世界と学内の激動の時期だった。当初は編集用コンピューターや撮影機材も完備していず、なれない作業にずいぶんとまどった。編集経験は忙しかったが、充実した時間を過ごすことができ、自身の創作活動や教育内容の整理にも大いに役立った。また、出版物に対する認識を変え、私をすっかり本づくり中毒にしてしまった。来年度から編集計画がなくなるのは、ちょっと寂しい。(小野山和代)
遠方から、知らない女の子が僕に会いにきた。『PORTFOLIO
采/綴』に掲載された、僕のページを見たからだと言う。この出版がきっかけとなって、ギャラリー企画の作品発表の機会も得た。それらはまったく予想しなかった出来事だった。出版物は一人歩きする、おもしろいものだと身を持って感じた。
大学院に進学し、その後、助手として勤める僕の時間と、ぴったり重なる形で4年間の出版計画があった。中盤カメラで何百カットも写真を撮った。うっかりカメラの蓋を開けてしまったり、数々の失敗もさせていただいた。このようなぶっつけで勉強できる機会は、もうないのではないだろうか。常に前年よりもよいものを目指すこと、誰もやっていない企画にこだわる編集委員の姿勢が、僕個人の作品制作を含めた、さまざまな意識を高めてくれた。僕にとって貴重な時間だったと、しみじみ感じる。(加賀城健)
卒業後、副手となり編集の手伝いをした。編集者の一員となると、学生のときと立場が変わり、出版の失敗は取り消すことができないとプレッシャーがかかることもあった。原稿を集めたり、撮影準備をしたり、また、作品と制作者の名前が一致しているだろうか、誤字がないかなど何度も確かめなければならなかった。しかし、学生作品のさまざまなページ構成を見て、よい経験をさせていただいたと実感した。このようなプレゼンテーションの機会によって、開放的な制作活動ができるのはよいことだと思う。この企画とともに、私の副手勤務も終わるが、出版の対社会的な活動の経験を生かして、僕自身も社会で成長したい。(山本将史)
出版の4年目になって、私は、編集される学生の立場から、編集する側に変わった。編集は、ほんとうに大変な仕事だと思う。限られた条件でいかに作品をよく見せるか、読者側の立場をふまえた検討など、考えるべきことがいっぱいだ。でも編集の仕事に関われて、よかったと思う。学生のころは、作品制作で頭がいっぱいで、プレゼンテーションへの取り組みが全然できていなかった。しかし編集を手伝う機会が与えられたことで意識が変わった。今では、なぜもっと早くプレゼンテーションの重要性に気づかなかったのだろうと、ほんとうに後悔している。もし以前の私のような学生がいれば、このことを伝えてあげたいと思う。(高橋亜希)