報告書刊行!

    『21世紀の工芸を考える 大阪芸術大学藝術研究所研究計画の成果から

 

21世紀の工芸、その可能性と問題点福本繁樹

モダニズムと工芸藤森照信/北澤憲昭/佐野敬彦/山口道夫

グローバリズムと土着性與那嶺一子/小林純子/松原龍一/今井陽子/柳原睦夫

想いのカタチを青白磁に託して深見陶治/福本繁樹

大阪芸術大学藝術研究所研究計画活動概要柳原睦夫/西脇友一/佐野敬彦/藪 亨/

田中敏雄/山口道夫/平金有一/人見政次/櫻井忠彦/伊藤 隆/福本繁樹/梅田幸男/

佐々田美雪/小野山和代/南 和伸/奥田右一/田嶋悦子/南野 馨/東野真紀/加賀城健

 

著者・発行者/工芸教育研究会(大阪芸術大学内)

〒585-8555 大阪府南河内郡河南町東山469 大阪芸術大学内

A4判 総56頁、発行日/平成15年3月13日、 録音起稿/京都通信社、編集・印刷/求龍堂、非売

 

 

工芸教育研究会
これまでの活動概要  (2003年3月更新)

 当研究計画は、21世紀における「工芸」と「工芸教育」の実体についての調査研究とともに、21世紀の工芸理念の研究をすすめようとする活動の一環である。その具体的な方法として「セッション」の企画開催を中心に活動をすすめてきた。「セッション」(session 、会期、集まり、集団活動の意)企画の状況設定には、一定のこだわりをもって、十分に趣向をこらすことを心掛けた。それにはまず、各研究目的とともに開催地を特定して、その地に全員で足を運ぶということである。実物(作品)に直接触れたい、生きている文化に触れたい、臨場感とともに考えたいと、「現地」にこだわった。このことによって現地の空気とともに、最新情報、専門家や当事者の説明や声に触れることができる。また、参加者全員が一定期間、同一環境に拘束されることによって、共通の問題意識をもって意見交換に集中できるという利点も得た。そして、セッションのパネリストを複数設定して、できるだけ簡潔に研究発表や意見交換をおこなってもらうように依頼した。研究会を、パネリストから既発表の知識を一方的に供与していただくだけの場に終わらせることなく、つねにあらたな問題を掘り起こし、それについて共同で考えていただくということを企図したからである。その結果、あらかじめ提示した議題と、意外な顔合わせ、異なった専門分野からの意見、開催地で見聞する文化によって惹起する問題意識などがあいまって、効果的に議論を深めることができた。 

 

大阪芸術大学藝術研究所研究計画「高等研究教育機関における工芸の創作・教育の現状とそのあり方」
研究期間: 平成9〜11年度 3年間

学内共同研究者 : 藪 亨(代表)、柳原睦夫、平金有一、櫻井忠彦、伊藤 隆、人見政次、福本繁樹(研究ディレクター)、梅田幸男、佐々田美雪、小野山和代、南 和伸、奥田右一、田嶋悦子、山口道夫 (研究助言者)

 平成9〜11年度の研究計画では、その研究目的として、1)大学の危機への対応、2)工芸の創作・教育のためのシステム研究、3)工芸の創作・教育ニ対して時代が要求するものを探る、4)実際的問題の打開策検討、以上の4項目をかかげて発足した。山積する研究課題に対して、まず設問を明文化し、視野をひろげることをめざした。芸術大学関係の資料を国際規模で収集したり、他機関と交流をすすめ、研究助言者を招いた講演会、セッション、研究会を中心に活動をすすめた。なかでも複数の研究者を集めたセッションでの意見交換が、今日的な問題を探るのにより効果的だった。

1)講演会開催

  1. 研究会、大学院(工芸)研究室にて、平成9年5月23日
    研究計画設問」(発表:福本繁樹)、
    大阪芸術大学工芸学科沿革・設置趣旨」(発表:櫻井忠彦
    「大阪芸大では、昭和43年に初めて卒業生を出しています。初期に集まった先生方は大阪市立工芸高校に関係する方がほとんどで、系統や出身もさまざまな寄り集まり。まず学生数を増やす、ビジネスとしてどうすればいいか考える、それが始まりだと思います。大学が大きくなったのは、そこがよかった。最初に(教育研究機関としての)意識やカラーがあったら、ここまで大きくならなかったと思うね。工芸の授業はデザイン学科工芸専攻としてはじめられたのですが、昭和46年の入学から工芸学科が独立しました」(当日の発言から)
  2. 特別講演会「テクスチャー感覚」鷲田清一(大阪大学文学部教授)芸術情報センターAVホール、学内一般公開、平成9年7月7日
    哲学者の鷲田清一氏は、最近のフアッション界では、ヨーロッパの美的価値が普遍化した社会の価値観に反抗するような「悪趣味」や、アジア、アフリカなどのローカルなパワーに目を向けだしていることなどをとりあげるところから「モード」についての時代的考察を展開。1980年代に象徴的だった清潔シンドロームと気持ち悪いものが人気となる風潮の背反性、身体を運動・代謝・皮膚という面から考える三宅一生の服づくりの原理、鮮烈な社会問題をコマーシャルにとりあげるベネトンの姿勢など、具体的な事例を検証し、触覚性についての大胆な仮説を主張。感覚の重要性が、数世紀単位でおおきく変わってきているのではないかと、中世は聴覚、近代は視覚が世界の軸になった時代、そしてそれがいま終わりつつあり、「テクスチャー感覚」が現代いかに重要であるかを熱弁。工芸は全身的な感覚のもの、身体の感覚を全身で参入させるアートだと、現代の工芸にたいするオマージュとしてお話いただいた。
  3. 日米ジョイント講演「草間テツ雄(岡山大学教授)=Glen Kaufman(ジョージア大学教授)、芸術制作研究科(工芸)共催、芸術情報センターAVホール、学内一般公開、平成9年10月30日
    カウフマン教授の話と、アメリカでの教育活動の経験がある草間氏の解説で、アメリカの代表的な芸術大学の例と、大学院の芸術教育について。アメリカの芸術大学では、入試はポートフォリオ、GPA(学業平均値)証明、教授の推薦状で判定。総合教育で歴史、美学、評論も学習、広い視野の弁説と論文が必要とされる。四期制によって10週間ごとに講評。毎週2回教師による学生個別会話指導。卒業展覧会は4〜5週間開催、学生が一般に対して作品解説する。
  4. 特別講演会「二十一世紀の風流」横山俊夫(京都大学人文科学研究所教授)、12−21教室、学内一般公開、平成9年12月5日
    「20世紀は大きな逆説の時代といいますか、人間が、拡大を求めながら、結果として得たものは萎縮であった」「近代というのは、とくに戦後のアメリカの文化が象徴するように、実力あるものが周りを排除して、勝った者が輝くというサクセスストーリー、そういう大前提があったと思うのですが、そのままでいきますと、完全に混沌とした戦いの連続になるのですね」「最近は『もののつくり方、使い方』を考えている。ものをつくるというのは、そのものがもたらす新しい人間関係をもふくめてデザインする、そういうことなのかという気がします。ところが現実は専門化が進んで、人間関係が希薄になっている。互いに孤立化して顔が見えない。そこで申し上げたいのは、ちょっと特別な意味での『風流』という言葉です。基本的に『風流』というのはエロスとかかわりがありまして、生命ということ。そこで『二十一世紀の風流』と申し上げたいのは、どうすれば魂が震えるかということを考えてほしいということです」。(当日の発言から)
  5. 特別講演会「オブジェ」樋田豊次郎(東京国立近代美術館工芸課主任研究官)紀泉閣、平成10年1月18日
    「オブジェ」とは、彫刻的、立体的、作者の表現するものが強い新しい芸術だというようなイメージがあるが、では彫刻、デザイン、通常の工芸とどのようにちがうのかと、独自の視点でオブジェ論を展開。明治以降の「工芸」の展開とその概念のあり方を検証し、「われわれが慣れ親しんでいる『工芸』からいったん足を洗って、それを自ら解体し、そのなかのエッセンスをとりだして見ていくことができるならば『オブジェ』というものもちがってみえてくると思うのです」と、工芸の外側からの視点で工芸の解体を試みる。「オブジェ(objet [仏]、 object [英]、物、客体、客観、目的語)」を、その反対語の「スュジェ(sujet [仏]、subject [英]、主体、主観、主語)との関係で考察。主体と客体の関係、主語と述語の関係から、述語が主語に対して意味を投げ返すという構造から、現代美術のレディメイドや、ポップアート、もの派、そしてクレイワーク、ファイバーワークなどの歴史的な相関関係を分析。
  6. 「鼎談・大学と工芸」開催。パネリストは、中村錦平(陶芸家・多摩美術大学工芸学科教授)、宮島久雄(国立国際美術館・館長)、柳原睦夫(大阪芸術大学教授)の三氏。芸術情報センターAVホールにて学内一般公開、平成10年6月26日。記録を出版物に投稿。
  7. 講演会「現代工芸の新世代」金子賢治(東京国立近代美術館工芸課主任研究官)、香川県直島文化村ベネッセハウスにて開催。前日工芸学科主催の同氏による講演会と連動させた。平成10年11月7日
    前日大阪芸術大学で、工芸学科主催の同氏による講演会が開催されたが、熱弁は長時間におよび、予定の時間をはるかにオーバーするものだった。1950年代の陶芸家集団の走泥社、四耕会の動きをとらえ、藤本能道、八木一夫、清水九兵衛、富本憲吉、加守田章二ら作家の発言を詳細にとりあげ、その作陶論を比較検証。とくに、氏の「工芸的造形」論を明解に提示するなかで、アバカノヴィチの造形思考の変化に注目し、初期の「織りの表面の動きとうねりに関心がある。糸とロープの縺れのすべてと変容の可能性すべてに関心がある。一本の糸が通って行く道筋に関心がある」(1971年)などと、後年の、「はじめっから彫刻をやろうと思ってたのよ」(1972年)などのコメントの意味のギャップを指摘したり、また、アリソン・ブリトンの「素材の制約の娯しみ、これが工芸的実践を純粋美術やデザインから区別する特性であると考えておきたい」という言葉から、「工芸」に関する理解のちがいに注目するなど、鋭い視点があった。この話を、翌日の講演「現代工芸の新世代」に立体的に連動させ、今日活躍する比較的若い作家の活動をとりあげて作品紹介・解説。なお氏は後年、その論の集大成を、大著『現代陶芸の造形思考』(阿部出版、2001年)にまとめた。
  8. 講演会「芸術家、職人そしてデザイナー」乾由明(金沢美術工芸大学・学長)、後刻、同大学教員との懇談会、金沢美術工芸大学会議室、平成11年2月3日
    安土桃山時代以来400年ものあいだ戦禍にあわず「天下の書府」といわれ、美術工芸の栄えた伝統的文化都市・金沢は、珍しく深い雪でおおわれていた。関西を拠点に活動する氏の、金沢への思い入れ、新学長としての大学行政についての見解など、「伝統に清新な生命を注入する革新」についてのお話を聴く。同大学は、昭和21年の戦後の混乱期に美術工芸専門学校として開校、3年後に美術工芸短期大学、5年後に4年制となった。当時デザイン(産業美術)に人気があり、工芸科をなくしたが、再び工芸が必要と認識され、昭和40年にデザイン科に工芸を設ける。昭和55年、氏がデザイン科に工芸はおかしいと雑誌に寄稿した意見がとりあげられ、工芸科が復活。氏は、工芸教育とは「職人でもあり、芸術家、デザイナーでもある教育」と結論づけた。
  9. 講演会「韓国繊維美術の現況」韓国の弘益大學校における授業や、教授の作家活動などについて、弘益大學校産業美術大學院の宋 繁樹教授、芸術情報センターAVホール、学内一般公開、平成11年5月26日
    韓国の弘益大學校における授業や、教授の作家活動などについて。学内公開。韓国よりの留学生に通訳の助力を得る。
  10. セッション「大学と工芸─『装飾』をめぐって─」、ゲストに鶴岡真弓教授(立命館大学・西洋美術史)を招き、同氏と本学教員の藪 亨・山口道夫・柳原睦夫の4氏がパネリストをつとめ、共同研究者ら総勢16名の参加により懇談会を開催、京都・壬生武家屋敷、平成11年12月15日。記録を出版物に投稿
  11. 第29回教員研究会(主催:大阪芸術大学藝術研究所) テーマ: 大阪芸術大学藝術研究所共同研究成果報告「高等研究教育機関における工芸の創作・教育の現状と、そのあり方」。第1部「芸術研究所共同研究成果概要報告」発表/福本繁樹。第2部「染織とテキスタイルデザインをめぐって」発表/福本繁樹・梅田幸男・山口道夫・奥田右一。13号館31(3)教室 平成13年1月19日  


特別講演会「テクスチャー感覚」
鷲田清一(大阪大学文学部教授)平成9年7月7日


特別講演会「二十一世紀の風流」
横山俊夫(京都大学人文科学研究所教授) 平成9年12月5日


特別講演会「オブジェ」
樋田豊次郎(東京国立近代美術館工芸課主任研究官)平成10年1月18日


講演会「芸術家、職人そしてデザイナー」
乾由明(金沢美術工芸大学・学長) 平成11年2月3日


第29回教員研究会「染織とテキスタイルデザインをめぐって」左より奥田右一・山口道夫・梅田幸男・福本繁樹 平成13年1月19日

 

2)懇談会、記録、投稿など

講演会の後、共同研究員により講師との懇談会を開催した。講演会との連動で、さらに議論の内容を高めることができた。おもに講演内容と、われわれの身近な、工芸創作の実際的問題や、工芸教育の問題につなげるようにつとめた。また録音、ビデオ撮り、録音テープの起稿、その校正をすすめた。それ以外に共同研究員のみで、研究会を開催した。講演会や懇談会の内容を録音、ビデオ撮影、写真撮影などにより記録した。また録音テープの起稿と、その原稿の校正をすすめた。その記録の一端を出版物に投稿

「鼎談・大学と工芸」 『PORTFOLIO 采/綴 大阪芸術大学大学院芸術制作研究科 工芸 1998-1999』 1999年3月20日 大阪芸術大学発行
「セッション・大学と工芸 ─『装飾』をめぐって」 『PORTFOLIO 采/綴 大阪芸術大学 染織 1999-2000』 2000年3月22日 大阪芸術大学発行

 
 特別講演会「テクスチャー感覚」の後の懇談会
 講師:鷲田清一(大阪大学文学部教授)をかこんで 平成9年7月7日

3)美術館や研究機関の取材・訪問、研究者との交流

●牟礼 イサム・ノグチ庭園美術館 見学(平成10年11月7日)
●香川県直島 文化村ベネッセハウス 見学(平成10年11月7〜8日)
●岡山県立大学 訪問(平成10年11月8日)
●金沢美術工芸大学 訪問、教員との懇談(平成11年2月3日)
●金沢卯辰山工芸工房 訪問(平成11年2月4日)
●金沢市民芸術村 訪問(平成11年2月4日)

 

 
 金子賢治(東京国立近代美術館工芸課主任研究官)講演会「現代工芸の新世代」の後で
 香川県直島文化村ベネッセハウスにて 平成10年11月7〜8日

4)資料収集

国内外の芸術系大学の「大学案内」「入学案内」「卒展カタログ」などを収集するため、とくに芸術系大学の多い日米英の三国の各大学に依頼状を発送。国内では『美術手帳』増刊号「アート・スクール・ガイド 1996 」に掲載された約190の大学へ、アメリカは『Directory of MFA Programs in the Visual Arts』(by College Art Association 初版1992,改訂版1996) 掲載の198大学へ、イギリスは『A Guide to First Degree and Post Graduate Courses in Fashion and Textile Design 』(by Association of Degree Courses in Fashion and Textile Design)掲載の40大学へ連絡をとった。結果、海外の約70大学、国内約100大学の資料を収集する。他にも大学問題の文献、個人作家のカタログなどの資料も収集

 

 

大阪芸術大学藝術研究所研究計画「現代社会における工芸の実作と教育の現場」
研究期間: 平成12〜14年度 3年間

学内共同研究者 : 柳原睦夫(研究ディレクター)、西脇友一、佐野敬彦、田中敏雄、山口道夫、平金有一、人見政次、櫻井忠彦、伊藤 隆、藪 亨、福本繁樹、梅田幸男、佐々田美雪、小野山和代、南 和伸、奥田右一、田嶋悦子 (南野 馨、東野真紀、加賀城健)

 平成12〜14年度の研究計画では、各年度ごとに視点や論点を変え、3年間の活動を、より多角的、総合的なものとするようにつとめた。初年度は、創作活動の第一線で活動する実作者を中心に現代に目を向け、次年度は、理論の研究者を中心に、古代を視野に入れるべく「縄文時代」に焦点をあて、最終年度は、地域性をとりあげた。3年間にわたる研究計画の議題は、時間軸において「現代」「縄文時代」「モダニズム」に、空間軸において「日本と西洋」「土着性」に収斂した。とくに「現代」と「縄文時代」をとりあげる過程で「モダニズム」が大きな関心事になった。それは、明治時代以降の西洋文化の流入や近代主義によって、日本の伝統的な芸術構造が大きく変容したが、それが今日の状況を決定する大きな要因になっているので、その部分を改めて再検証してみるべきだとの考えが示されたからである。また、現代に先鋭化する国際化、情報化の動きをとらえるには、地域性、土着性といった空間軸をとりあげるべきだとの考えもでてきた。それは、3年間のあいだに全国を精力的に移動しての研究活動に、土着性を感覚的にとらえる機会がメンバーに与えられたことも原因しているかも知れない。3年間の研究活動によって信楽、長浜、京都、青森、三方五湖、天竜、那覇へと足跡を残した。セッションでは、設定したテーマに従って、単純な議論が展開されるわけではなかった。縄文文化をテーマとするセッションでは佐藤道信氏の発言によってモダニズムへの関心に導かれたし、モダニズムをテーマとするセッションでは藤森照信氏によって示された国籍不明の建築によって土着性について考えさせられた、といった具合で、各セッションで多様な問題が錯綜して展開した。そのなかで、既成の芸術体系や価値観を疑うところから、さまざまな問題も提示された。

 

1)講演会・セッション・懇談会などの開催

  1. 講演会「中川幸夫の花」主催。講師:中川幸夫。協賛: 滋賀県陶芸の森、滋賀県陶芸の森の広報により一般公開、滋賀県陶芸の森研修館ホールにて。平成12年8月19日
    1999年の第二回織部賞グランプリを受賞、2000年の夏には銀座の二つのギャラリーで個展を同時開催、日曜美術館でも話題となった、生け花作家中川幸夫先生を講師にタイムリーに招待できた。またその講演会に滋賀県陶芸の森に協賛いただき、広報により一般公開して、反響もおおきかった。1977年刊行の『華 中川幸夫作品集』をもとに作品解説、作品の意図や裏話など。
    講演会場となった滋賀県陶芸の森では、研修館の研究員・指導員との交流、施設見学、展覧会観賞などと連動させることができ、陶芸の森のユニークで多角的な活動を見学することができた。
  2. セッション「大学と工芸─創作現場における『発見』」 協力: 財団法人長浜曳山文化協会・長浜曳山博物館。パネリスト: 熊井恭子(ファイバーワーク・長岡造形大学、研究助言者)、田嶋悦子(陶芸・大阪芸術大学)、橋本真之(金工、研究助言者)、司会: 柳原睦夫(陶芸・大阪芸術大学) 長浜曳山博物館伝承スタジオにて、平成12年11月11日
    このセッションには、金工・陶芸・染織の分野の第一線で活躍中の作家を一堂に集めることができ、それぞれの立場や視点からの創作姿勢や見解が示された。そのなかで期せずして、パネリスト全員の口から、創作現場における「発見」についての熱弁が聞かれたことは、「工芸的造形」の本質を示すことではないかと思われた。貴重なセッションの記録を原稿化して、出版物に投稿。
    長浜曳山博物館は、10月1日オープンしたばかりの新しい博物館。伝統と密接な工芸と、観光で成功している長浜のあり方を、「観光学」「観光芸術学」「民俗芸術学」などの関心からも見聞できた。
  3. 工芸学科陶芸コース主催「自作の歩み」深見陶治・福本繁樹 対談(共同研究員・福本繁樹参加)大阪芸術大学藝術情報センターAVホールにて、平成12年11月15日
    講演会は、陶芸と染織の両分野からの対談で、とくに陶芸界でめざましい活躍を続ける深見陶治氏を講師として招待できたことは大きな成果といえる。陶芸家としての「自作の歩み」を、染色家との対談形式で披瀝していただく。理論と実作、仮説と真理のギャップを許さない、深見氏の厳格な作家根性と、鋭敏な視座が、気さくなお人柄から示され、学生にとっても刺激的で興味深かったようだ。講師の熱弁をさらに深めていただき、その記録を充実したものとするため、再度の講演会・懇談会を企画した。記録を『21世紀の工芸を考える 大阪芸術大学藝術研究所研究計画の成果から』に掲載。
  4. 講演会「自作の歩み Part-2 」主催。講師: 深見陶治(研究助言者)。ウィングス京都(京都市女性総合センター)会議室にて、平成13年 2月23日
  5. 公開講座「縄文と工芸」(一般公開)。平成13年6月30日、三内丸山遺跡 学習室にて。青森中央学院大学・大阪芸術大学工芸教育研究会共催
    基調講演「縄文時代と工芸小山修三(民族学・考古学、国立民族学博物館)
    研究発表「ニューギニアの土器の例から福本繁樹(民族藝術学・染色、大阪芸術大学)
    セッション: 縄文遺跡にて「大学と工芸」を考える

    パネリスト
    パネリスト
    コメンテーター
    進行 

    佐藤道信(日本美術史、東京芸術大学)
    建畠 晢(芸術批評、多摩美術大学)
    小山修三(民族学・考古学、国立民族学博物館)
    柳原睦夫(陶芸、大阪芸術大学)

  6. セッション: 縄文遺跡にて「大学と工芸」を考える Part II。平成13年11月21日、縄文遺跡(鳥浜貝塚)の近くの宿にて

    第1部 展覧会報告

    今年の工芸展の動向」  福本繁樹(染色、大阪芸術大学)

    糸と針のアート展」   小野山和代(染織、大阪芸術大学)

    第2部 講演

    「大学と工芸」(美術館学芸員の立場から) 中井康之(国立国際美術館学芸員)

    西宮市大谷記念美術館から国立国際美術館へと、美術館で現代美術を中心に学芸活動を続けてきた氏から、工芸世界への視野を伺う。

  7. セッション: 天龍にて「大学と工芸」を考える ― モダニズム と 工芸。平成14年6月29日、天竜市立公民館にて。記録を『21世紀の工芸を考える 大阪芸術大学藝術研究所研究計画の成果から』に掲載 

    パネリスト
    パネリスト
    パネリスト
    進行 

    藤森照信(建築史、東京大学)
    北澤憲昭(美術評論、跡見学園女子大学)
    佐野敬彦(環境デザイン論、大阪芸術大学)
    山口道夫(デザイン、大阪芸術大学)

  8. セッション: 沖縄にて「大学と工芸」を考える ― グローバリズムと土着性。平成14年11月3日、沖縄県立芸術大学第三キャンパス付属研究所AV講義室にて。記録を『21世紀の工芸を考える 大阪芸術大学藝術研究所研究計画の成果から』に掲載

    パネリスト
    パネリスト
    パネリスト
    パネリスト
    進行 

    與那嶺一子(沖縄工芸・沖縄県立博物館)
    小林純子(日本美術史・沖縄県立芸術大学)
    松原龍一(近代工芸・京都国立近代美術館)
    今井陽子(近代工芸・東京国立近代美術館)
    柳原睦夫(陶芸・大阪芸術大学)


    講演会「中川幸夫の花」
    講師:中川幸夫 平成12年8月19日


    講演会「自作の歩み Part-2 」
    講師:深見陶治 平成13年 2月23日


    セッション 天龍にて「大学と工芸」を考える―モダニズムと工芸 平成14年6月29日、天龍市立公民館にて
    左より、パネリスト:佐野敬彦・北澤憲昭・藤森照信・山口道夫(進行)の各氏


    セッション 沖縄にて「大学と工芸」を考える―グローバリズムと土着性 平成14年11月3日、沖縄県立芸術大学にて
    左より、パネリスト:今井陽子・松原龍一・小林純子・與那嶺一子・柳原睦夫(進行)の各氏

2)懇談会、記録、投稿など

講演会の後、共同研究員により講師との懇談会を開催した。講演会との連動で、さらに議論の内容を高めることができた。おもに講演内容と、われわれの身近な、工芸創作の実際的問題や、工芸教育の問題につなげるようにつとめた。また録音、ビデオ撮り、録音テープの起稿、その校正をすすめた。それ以外に共同研究員のみで、研究会を開催した。講演会や懇談会の内容を録音、ビデオ撮影、写真撮影などにより記録した。また録音テープの起稿と、その原稿の校正をすすめた。その記録の一端を出版物に投稿

「セッション 大学と工芸─創作現場における『発見』」 『PORTFOLIO 采/綴 大阪芸術大学 染織 2000-2001』 (2001年3月22日 大阪芸術大学発行)

●公開講座「縄文と工芸」 『PORTFOLIO 采/綴 大阪芸術大学 染織 2001-2002』 P.88〜99に記録掲載(2002年3月22日 大阪芸術大学発行)

概要

基調講演: 縄文時代と工芸 小山 修三(国立民族学博物館 民族学・考古学)

アボリジニから見た美術・工芸

20年にわたる、オーストラリア・アボリジニの社会のフィールド調査から、アート (美術)とクラフト(工芸)の区別について。

縄文土器について

日本の考古学の水準は世界的にも評価が高く、その研究は伝統的に土器の様式論に 集中。

デザイン工房

土器は渦巻文だとか波状文だとか、デザインによって地域性がみられる、これは一 種のファッションで、ファッションのメカニズムが一つあるんじゃないか。縄文時 代にはデザイン・ハウスのような、流行の中心をつくるような場所があって、その ファッションを牛耳るという現象があったんじゃないか。

三内丸山芸大 

縄文時代の研究は三内丸山を中心にいま、飛躍的に進展している。いまから1万 2000年とか1万3000年前の草創期に、すでに完成された土器が現れている。その 完成度は中国から新しい技術、須恵器が入るまで変わらなかった。彼らは決して貧 しい野蛮人ではなく、豊かなものと心を持った人だったことがわかってきた。

研究発表:ニューギニアの土器の例から 福本繁樹(大阪芸術大学 染色・民族藝術学)

かつてニューギニアなどの土器村にフィールド調査を繰り返して、『精霊と土と炎 南太平洋の土器』を出版した実績から、縄文土器の復元研究についての考えを述べ る。手で考える職人と、頭で考える学者の違い、粘土の選定と調整の重要性、とり わけ文様の世界が人々のこころをつかむ鍵になることなど。

セッション: 縄文遺跡にて「大学と工芸」を考える

パネリスト
パネリスト
コメンテーター
進行

佐藤道信(東京芸術大学 日本美術史)
建畠 晢(多摩美術大学 芸術批評)
小山修三(国立民族学博物館 民族学・考古学)
柳原睦夫(大阪芸術大学 陶芸)

4名によるトークセッション。詳細は上記出版物に掲載。

セッション: 縄文遺跡にて「大学と工芸」を考える
左より、建畠 晢、佐藤道信、小山修三、柳原睦夫の各氏

 

3)美術館や研究機関の取材・訪問、研究者との交流

●滋賀県陶芸の森研修館の研究員・指導員との交流と、施設見学(平成12年8月19日)
●「信楽の陶芸展」(信楽陶芸の森陶芸館)観賞(平成12年8月19日)
●「オリエントの秘宝・帰国展」(MIHOミュージアム)観賞(平成12年8月20日)
●長浜曳山博物館見学、長浜曳山博物館学芸員・秀平文忠氏館内案内、展示解説。財団法人長浜曳山文化協会理事・中井博氏や、長浜曳山博物館学芸員・秀平文忠氏と懇談(平成12年11月11日)
●三内丸山遺跡の研究員・指導員との交流と、施設見学(平成13年6月30日) 
●青森県立郷土館見学(平成13年7月1日)
●弘前城趾見学(平成13年7月1日)
●弘前市立博物館見学(平成13年7月1日)
●鳥浜貝塚公園、三方町縄文博物館の研究員・指導員との交流と、施設見学(平成13年11月21日)
●秋野不矩美術館見学、美術館設計者藤森照信氏の解説により施設見学(平成14年6月29日)
●芹沢介美術館見学(平成14年6月30日)
●資生堂美術館見学(平成14年6月30日)
●「琉球王朝の華」展観賞。浦添博物館の研究員との交流と、施設見学(平成14年11月1日)
●城間紅型工房訪問。城間栄順氏夫人の解説で作業工程見学(平成14年11月1日)
●大宜味村立芭蕉布会館、芭蕉布織物工房(喜如嘉)訪問。重要無形文化財保持者平良敏子氏の解説で作業工程と施設見学(平成14年11月2日)
●国営沖縄記念公園・美ら海水族館見学(平成14年11月2日)
●沖縄県立芸術大学工芸学科訪問。長尾紀壽教授の解説で学内施設や授業内容見学(平成14年11月3日)
●沖縄県立博物館。学芸員の與那嶺一子の解説で館内見学(平成14年11月3日)
●読谷村立美術館見学(平成14年11月4日)
●読谷やちむんの里、北窯、宙吹きガラス工房虹訪問。従業者の解説で施設、作業工程見学(平成14年11月4日)
●佐喜眞美術館訪問(平成14年11月4日)
●琉球漆器糸満店、琉球ガラス村、琉球の館訪問(平成14年11月4日)
●高知県立美術館「柳原睦夫と現代陶芸の尖鋭たち」展オープニング参加(平成15年3月2日)
●高知県立牧野植物園訪問(平成15年3月2日)

  MIHOミュージアム見学。中川幸夫先生と共に 平成12年8月20日
 

  三内丸山遺跡見学 平成13年6月30日

  秋野不矩美術館見学、美術館設計者:藤森照信氏とともに 平成14年6月29日

  秋野不矩美術館見学、美術館設計者:藤森照信氏の解説を聞く 平成14年6月29日

  芭蕉布織物工房訪問。平良敏子氏の解説で作業工程と施設見学 平成14年11月2日

 

4)研究成果の編集、出版

 平成12〜14年度 大阪芸術大学藝術研究所研究計画「現代社会における工芸の実作と教育の現場」の活動成果を『21世紀の工芸を考える 大阪芸術大学藝術研究所研究計画の成果から』として出版。A4判 総56頁、発行日/平成15年3月13日、 録音起稿/京都通信社、編集・印刷/求龍堂、非売。

5)その他、研究課題に関連する資料収集、文献研究、国際交流など、多方面に活動

 

平成9〜14年における6年間の研究活動の反省から 

 大阪芸術大学制作研究科設立の趣旨に「理論と実作の連動」が謳われている。芸術大学として、研究機関として、またわれわれ教員にとっても、おおいに賛同できる趣旨である。しかし実際的な運用については困難もある。とくに「創作」という独自性にとりくむ実作者の研究活動は、個人的な実践による孤独な仕事が中心となるため、大学の機構のなかで「共同」で研究活動をする目的が限られる。実作者が理論家のような論理的な研究成果を求めても限界があり、特殊な研究目的を設定すれば、付帯的、余技的な研究計画となりかねない。その点「セッション」設定を中心とした当研究計画の方法は、「理論と実作の連動」の趣旨からも有効に機能して、きわめて意義深い成果をあげ、参加者一同も年々熱がこもり、盛り上がったものとなった。

 工芸学科を中心とした、実作を旨とする当研究計画は、講演会やセッション主催、取材、研修、交流などの実践を目的とするため、成果が目に見える形として残りにくいが、一方では社会的な形で成果を示すべく、セッション記録の起稿を心掛けてきた。貴重な意見交換の成果を密室にとじこめるべきではないと考えたからである。原稿は、単なる記録ではなく、一般対象の読み物として自立できるものにするため、パネリストには、問題提起の発言をわかりやすく要約していただくこと、起稿原稿は、当日の発言の有無にかかわらず存分に加筆校正していただくこと、最低「再校」までお願いすることなどを、予め承知いただき、記録原稿作成作業にとりくんだ。原稿用紙相手ではなく、パネリストが互いに顔をあわせて発言する会話文は、分かりやすく、興味深く、おおきな収穫となった。その成果としてすでに起稿原稿4編を平成10〜13年度刊行の『PORTFOLIO 采/綴 AYA/TOJI』に寄稿したが、さらに平成14年度末に刊行した成果報告書『21世紀の工芸を考える』にも3編を掲載することができた。

 当研究計画は、まとまった理論の構築よりも、創作のうえでのあらたな問題点を掘り起こすことを目的としてきた。その点においては大きな成果をあげることができた。だがそのために、あらたな研究課題がふえる一方という皮肉な状況におかれることにもなった。今後ますますこの研究計画が発展することをのぞむ所以である。

 

 

大阪芸術大学の「染織」を中心とする特別プロジェクト
特色ある教育研究の推進(平成13年度より「高等教育研究改革推進」)
「芸術の発表・表現とその社会的実践」
事業推進計画期間: 平成10〜13年度 4年間

活動の詳細については、当ホームページ掲載の『PORTFOLIO 采/綴 AYA/TOJI』出版紹介欄参照 

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